定本ヒッチコック・トリュフォー「映画術」という本を読みました。
ヒッチコックの映画作りの根幹について、インタビュアーのトリュフォーが、巧みに聞き出しています。
ヒッチコックの映画作りの本質的な部分が、テクニック的なことも含め、明らかになっており、読みごたえもあり、楽しめる本です。
そこで、定本ヒッチコック・トリュフォー「映画術」について、読んだ感想やどんな内容なのかをまとめてみました。
定本ヒッチコック・トリュフォー「映画術」に興味のある方は、チェックしてみてくださいね!
目次
本の内容とは関係ありませんが、定本ヒッチコック・トリュフォー「映画術」は、大きさも重さも一般的な本とは、違います。
まずは本の形状について説明します。
定本ヒッチコック・トリュフォー映画術は、B5判のハートカバータイプです。
B5判というのは、182㎜×257㎜のサイズの本で、かなり大きいです。文庫本と並べてみると違いがよく分かると思います。
定本ヒッチコック・トリュフォー映画術の本の重さを測ってみると1.2キログラムありました。
ノートパソコンと比較してみるとMacBook Proの13インチが、1.4kgほどですから、それよりちょっと軽い程度です。
実際、手に持って長時間読んでいると手が疲れてきます。寝転がって読んでみたりもしましたが、読みづらいです。(^_^;)
定本ヒッチコック・トリュフォー映画術は、
自らもヒッチコックのファンであるフランスの映画監督トリュフォーが、英語の通訳を介しながら行ったヒッチコックの作品についてのインタビューをまとめたものです。
サイレント映画時代の処女作から、トーキー映画、モノクロ映画、カラー映画と時代の変遷ごとでヒッチコックの作る映画が、どう変わっていったのかもわかります。
実際に読んでみて感じた、定本映画術 ヒッチコック・トリュフォーの魅力についてまとめてみました。
ヒッチコックが映画作りでもっとも大事にしていたのが、観客の「エモーション」を操作し、サスペンスを引き立てていくことです。
また、ヒッチコックがいう「マクガフィン」というプロットのきっかけにすぎない装置の具体的な内容についても語られています。
ヒッチコックが観客の視点をどこに向けさせ、どう見せるか、それにより観客のハラハラ、どきどき感を煽り、サスペンス性を沸き立たせているのかといったことが、具体的に語られています。
そういった手法や考え方、アイデアがわかる点は、非常に面白いです。
ヒッチコックは、既存の映画的手法を踏襲するのではなく、新たな試みに挑戦しているんですよね。
例えば、「ロープ」では、一本の映画をワンカットで撮影しています。
「ロープ」での撮影の苦労は並大抵のものではなかったようですが、それでもヒッチコックはやり遂げてしまいます。
また、「白い恐怖」では、悪夢にうなされるシーンにサルバドール・ダリの絵を使い、従来の伝統的な手法ではなく、自分のイメージする映像にマッチさせています。
頭に思い浮かんだイメージやアイデアを形にしなくては気が済まない性分なのと、それを実行していく行動力を持っているのだ思いました。
面白かったのは、ヒッチコックは自分の映画に、ちょい役で登場することで知られていますが、「救命艇」では、海の上が舞台のため、出演することができず、救命艇の底に落ちていた古新聞の広告に自分の姿を登場させています。
こういったアイデアは、なかなか思いつきませんよね。
自分の作る映画の雰囲気にマッチした俳優をキャスティングしたくても、俳優のスケジュールやいろいろなしがらみなどの関係から、それが思うようにいかなった部分も結構あったようです。
その辺のヒッチコックの本音を知ることもできます。
ちなみに、ヒッチコック映画では、男性ならポールニューマン、アンソニーホプキンス、ケーリーグラントなど、
女優なら、グレース・ケリー、イングリッド・バーグマン、キム・ノヴァク、エヴァ・マリー・セイント、ティッピ・ヘドレンなどが有名ですが、
女優については、ヒッチコック自身は、グレース・ケリーがもっとも理想とする女優だったようです。
写真が、豊富に掲載されているので、インタビューでヒッチコックが、話している技術的な手法など、写真を観ながら、確かめられます。
上から発表順になっています。
快楽の園(1925年)
山鷲(1926年)
下宿人(1927年)
ダウンヒル(1927年)
ふしだらな女(1927年)
リング(1927年)
農夫の妻(1928年)
シャンパーニュ(1928年)
マンクスマン(1929年)
恐喝(1929年)
ジュノーと孔雀(1930年)
殺人!(1930年)
スキン・ゲーム(1931年)
リッチ・アンド・ストレンジ(1931年)
第十七番(1932年)
ウィンナー・ワルツ(1934年)
暗殺者の家(1934年)
三十九夜(1935年)
間諜最後の日(1936年)
サボタージュ(1936年)
第3逃亡者(1937年)
バルカン超特急(1938年)
巌窟の野獣(1939年)
レベッカ(1940年)
海外特派員(1940年)
スミス夫妻(1941年)
断崖(1941年)
逃走迷路(1942年)
疑惑の影(1943年)
救命艇(1944年)
白い恐怖(1945年)
汚名(1946年)
パラダイン夫人の恋(1947年)
ロープ(1948年)
山羊座のもとに(1949年)
舞台恐怖症(1950年)
見知らぬ乗客(1951年)
私は告白する(1953年)
ダイヤルMを廻せ!(1954年)
裏窓(1954年)
泥棒成金(1955年)
ハリーの災難(1955年)
知りすぎていた男(1956年)
間違えられた男(1956年)
めまい(1958年)
北北西に進路を取れ(1959年)
サイコ(1960年)
鳥(1963年)
マーニー(1964年)
引き裂かれたカーテン(1966年)
映画に限らず、エンターテイメントのものづくりに対する考え方、アイデア、観客にどう見せるかといった「視点」の重要性が、よくわかりました。
個人的には、昔、ヒッチコックの映画にハマった時期があり、かなりの作品を観ましたが、(レンタルビデオ時代に。。。)
定本ヒッチコック・トリュフォー「映画術」を読んだ今、あらためて、もう一度、ヒッチコックの映画を観たくなりました。
技術的なことやエピソードを知っているとまた違った印象を受けると思います。